今回は『穢翼のユースティア』をレビューします。
AUGUSTから2011年にリリースされたタイトルですが、いまだに「傑作」だと語られることも多い名作のエロゲー。
果たして抜けるのか、泣けるのか、どうなんだい!
おすすめ度:
- 作り込まれた世界観で描かれる、重厚なシナリオが魅力
- キャラクターよりシナリオ重視の方はマストバイ
- メインヒロイン以外は蔑ろにされがちなので、イチャラブ目的だと微妙?
穢翼のユースティアとは
穢翼のユースティアは、AUGUSTから2011年に発売されたエロゲーです。
浮遊都市《ノーヴァス・アイテル》の最下層、「牢獄」と呼ばれる場所に住む主人公のカイムが、ヒロインたちとの出会いを通じて、隠された世界の謎に迫っていく物語。
貧富の差が激しい階層社会の中で泥臭く生きる人の在り様や、ダークファンタジーな世界の謎を解き明かすストーリーが魅力の作品ですね。
本作のテーマは「不条理」となっていて、その不穏なテーマが示す通り、容赦のない展開、残酷な描写、思わず目を背けたくなるような厳しい現実が描かれます。
よって大人な物語を楽しみたい方や、重厚なシナリオが好みの方には特にオススメのタイトルです。
なお本作は非常に評価が高く、エロゲーの感想が集う「ErogameScape -エロゲー批評空間-」でのコメントも、
- 「心を揺さぶられた傑作」
- 「圧倒的な世界観」
- 「記憶を消してもう一度やりたい」
などと絶賛されており、本作の完成度の高さがうかがえます。
また「AUGUSTの本気」と話されることも多く、本作は同ブランドの中でも頭一つ抜けた評価のタイトルとなっています。
タイトル | 穢翼のユースティア |
レーベル | AUGST(オーガスト) |
ジャンル | アドベンチャー |
発売日 | 2011/4/28 |
原画 | べっかんこう |
シナリオ | 榊原拓 |
ボイス | あり |
【口コミ】穢翼のユースティアの良いポイントをレビュー
1. 作り込まれた世界観
本作の世界観はかなり独特でダークな雰囲気を醸し出しているのですが、この世界観の作り込みが凄まじい点がおすすめポイントです。
浮遊都市《ノーヴァス・アイテル》は上から「上層・下層・牢獄」に分かれた三層構造の都市となっており、それぞれの階層に住む人々の暮らしぶりは全く異なるものとなっています。
特に一番貧しい最下層である「牢獄」に住む人々の、悲壮感と暗澹たる雰囲気が、非常に良く描かれていると感じました。
なお牢獄は下層の一部が崩落して出来た窪地のような場所となっているのですが、この牢獄の形成のきっかけとなった「大崩落《グラン・フォルテ》」という災害が人々の心に根付いています。
この大崩落は「都市が落ちる」という恐怖を人々の心に強烈に刻み込んでいます。
その結果、牢獄の住民たちはいつ落ちるのかわからない恐怖に怯えながら、刹那的に生きる日々を送っているというわけです。
都市の崩落によってあっさりと人の命が奪われるシビアな世界観は、本作の確かな魅力となっています。
2. 完成度の高いストーリー、心を揺さぶる展開
「最下層の牢獄→下層→上層」と舞台を徐々に上へシフトさせていきながら、ラストで世界の謎に迫るストーリーは全編に渡って非常に高い完成度を誇っております。
その中でも、私としては三人目のヒロインとなる「聖女イレーヌ」のチャプターが特に印象的でした。
このチャプターでは作中で常識とされていたある前提が覆されるのが驚きで、それに加えて、目を覆いたくなるような衝撃的なシーンも目の当たりにすることになります。
私はそのときディスプレイの前で呆然としてしまい、しばらくマウスをクリックする指が動いてくれなかったのを覚えています。
不条理の極みのようなシーンであり、エロゲーでここまで感情を揺さぶられたのは本作が始めてだったかもしれません。
3. 不条理というテーマと、考えさせられるメッセージ
「理不尽な不幸は人生につきものだ。特に、牢獄には腐るほど転がってる」
OPでのカイムのセリフです。
大崩落《グラン・フォルテ》で家族を失ったカイムはそれだけでも不幸ですが、この世界に蔓延る不条理は彼に安息を与えることはありません。
身近な人間に起こる悲劇や襲い掛かる不条理が、彼の価値観を根底から変化させていきます。
「生きるとはどういうことか」
「生きる意味とは何か」
そんな深遠な命題を突き付けられた彼が出した答えに、プレイヤーはそれをどう捉え、何を思うか。
絶望に染まった崩れ行く世界で、必死に生き続けようとする人間の姿を正面から描いている本作は、「生きることの意味」を考えさせる、深いメッセージ性が込められている作品だと思います。
【口コミ】穢翼のユースティアの悪い点をレビュー
世界観やシナリオは一級品の本作ですが、ユースティア以外のヒロインのEDが、完全におまけのような扱いになってしまっているのが残念な点です。
本作のシナリオは基本的に一本道であり、ユースティア以外のヒロインと結ばれると横道に逸れてしまうため、終着点であるユースティアルート以外の扱いが悪くなってしまっているんですね。
恋愛描写やエッチシーンも薄いため、そういった要素を期待すると肩透かしをくらう羽目になります。
ヒロインとのイチャラブ要素に期待せず、世界観やシナリオを楽しみたい方にオススメしたいタイトルですね。
穢翼のユースティアの推しキャラは「リシア」ちゃん!
私の推しキャラは四人目のヒロインとなる「リシア・ド・ノーヴァス・ユーリィ」です。
名前で勘付いた方もいるかもしれませんね。そう、彼女は上層の王宮に住まう王女なのです。
箱入り娘で世間知らずだった彼女は、カイムの提案で牢獄を視察して都市の現状を把握します。己の無知さを恥じた彼女はようやく自分の意志を持ち、都市の現状を打開すべく動き出します。
そのように、腐敗した政治に切り込んでいく彼女の勇姿には、胸を打たれるものがありました。
私が本作で一番好きなシーンは、彼女が王宮の近衛騎士団長のヴァリアスに向けて覚悟を見せるシーンです。
ヴァリアスの剣を手で握りしめ、血を流しながら発する彼女の言葉には重みがありました。民を想うリシアの強靭な意志が見えるそのシーンは間違いなく、本作屈指の名シーンです。
一人の少女が強い意志を持ち、努力を重ね、都市を改革するために全力を尽くす姿を、是非その目で見届けてみてください。
穢翼のユースティアの総評
穢翼のユースティアは作り込まれた世界観と重厚なシナリオが魅力のゲームです。
ダークファンタジーな世界の物語が好みな人に、オススメしたいタイトル。
未プレイの方は、ぜひ手に取ってみて下さい。